暗闇の中、心臓ユニット(装置)が配られた30名だけの観客には、ヘッドフォンと3Dメガネを装着するように促されます。鑑賞中、観客は手のひらを通してリアルタイムにダンサーの心臓を感じながら、ヘッドフォンから流れてくるダンサーの心音と、様々な立体音響を聞くことになります。パフォーマンス空間“Atria”(心房/天につながる中庭)は体内の茶室、手にしているのは“Matcha”(抹茶)ならぬ心臓です。ダンサーの鼓動と、精神世界を想像させるサウンドとリズム。さらに3D映像に彩られた奥行きの空間で、観客はいつの間にかダンサーの内なる身体に密接に繋がっていきます。体内の茶室―心臓。ダンサー川⼝ゆいは、お茶を振る舞うがごとく、観客に⼼音を振る舞うのです。それによって観客それぞれが、自らの⽣命についても思いをめぐらし、力を蓄えるひとときをご提供致します。
映画「ミロクローゼ」(2012)、PARASOPHIA京都国際現代美術祭で発表した新作「憧れのボディ/Bodhi」(2015)と常に、実験的な映像手法を提示し、領域横断的に活躍する石橋義正と、圧倒的なパワーと存在感を持ち、様々なメディアを使ったダンスパフォーマンスを自ら演出するダンサー・川口ゆいが共同で、“生命力”をテーマに映像テクノロジーと奇抜なアイデアに満ちた、新感覚のメディアパフォーマンスを創り出します。 バイノーラル録⾳(⿎膜に届く音声状態で記録する方式。ヘッドフォンで再生すると空間の再現性が高まる)のサウンドフィールド、独自の美意識あふれる斬新かつ緻密に計算された映像世界、ユニークな心臓ボックスの組み合わせで、視覚・聴覚・触覚のあらゆる面から観客の知覚をゆさぶり、ダンサーの肉体が魅せる40分間のライブパフォーマンスは、これまでにない臨場感をもって濃密な“生命体験”をもたらします。